彰は走りながら上着を脱ぎ、その上着で、男の人の身体に纏わりつく炎を振り払おうとする。



でも一向に火は消えず、しばらくするとその男の人は、糸の切れた操り人形のようにどさりと地面に崩れ落ちた。



苦しげに前に手を伸ばし、その手も力尽きたように地面に落ちる。




そのまま、ぴくりとも動かなくなった。




傍らに佇んで彼を見下ろす彰は、あたしに背を向けていて、その表情は見えなかった。



少し経ってから彰は踵を返し、あたしのもとに戻って来た。





「………行こうか」





力ない声で呟いた彰の顔を、あたしはじっと見上げる。




疲れたようにゆっくりと口角を上げて、いつもの優しい微笑みを浮かべた彰。



その目に、言いようもない悲しみと無力感が滲んでいた。





―――なぜ、助けられなかったのか。



どんなにか痛く、苦しかっただろうか。





そういう後悔の念に苛まれているのが、あたしには分かった。