爆撃の音は、いつの間にか聞こえなくなっていた。




そのことに気づいて、やっと、少し安堵する。




そのときあたしは、「恐ろしい時間がやっと終わった」と思っていた。





………でも、本当の恐怖が訪れるのは、それからだったのだ。






鶴屋食堂へと向かう道は火の勢いがものすごく、通れそうにもなかったので、この付近でいちばん大きな川のほうに向かうことになった。



水があるところなら、火事が届いていないはずだから。




途中で、すでに火のおさまった辺りを通った。





彰の背中にしがみついて、周囲を見渡したとき。



全身の血の気が、一気にざぁっと引いていくのが分かった。






「………な、に、これ……」





それだけしか、言えなかった。




必死に駆ける彰の耳には、あたしの声は聞こえなかったようだ。





あたしは、言葉も出せないまま、揺れる景色を呆然と眺めた。