そのとき、後ろのほうで、



めきめき、ばきっ、



という音がした。




かろうじて立っていた大きな柱が、焼け崩れていく音だ。





彰があたしの手首をぐいっと引く。




そして、彰の腕の中に倒れこんだあたしを、ぎゅっと抱きしめた。





「彰、ありがと………」





彰の胸に顔をうずめ、煙にむせながらお礼を言うと、彰はあたしの頬に手を当てて上向かせた。




真近にある彰の顔は、煤に汚れていた。




そして、きつく眉根を寄せた険しい表情を浮かべていた。






「百合、なぜ川のほうに逃げなかった!

わざわざ火のひどいところに………」





「だって……鶴屋に、これを届け………」






ずっと胸に抱きしめていた風呂敷包みを指し示すと、彰が「馬鹿!」と怒鳴った。





「この……馬鹿! 命が一番だろう!」





彰が顔をくしゃりと歪めて、あたしを抱く腕に力を込めた。





あたしの耳は、彰の胸にぎゅっと押し当てられている。




彰の心臓の音は、どくどくどく、と早鐘を打つようだった。





走って来てくれたから?