先生は、私の視線を感じたのか、ちらりとこちらに目を向けました。




そして、なぜか一瞬、動きを止めてから、






「………おう、春川。早いな」






いつもの笑顔に、ぱっと変わりました。





私は開いたままの本を机に伏せ、「おはようございます」と挨拶をしました。





先生は少し躊躇うような素振りを見せたあと、教室の中に入ってきました。






「いつもこんなに早く来てるのか?」






「あ、はい……」






もっとたくさん言葉を出したかったのですが、口下手な私は、それきり何も言えず、少し俯きました。






先生は、すこし困ったように頭を掻いたあと、







「………俺は、教室の見回り。


えーと、ここのクラスは、何も問題ないな?」






「あ、はい………」