mekonekoさんの作品一覧

有明の数え歌 ―泣かない妹と、眠らない姉―
mekoneko/著

総文字数/26,171

後宮ファンタジー7ページ

第70回キャラクター短編小説コンテスト「再会から始まる和風後宮ファンタジー」エントリー中
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人生でいちばん割のいい仕事は、御まる洗いだった。 声は出す。涙は出さない。それが泣き女の露の流儀だ。死んだ人に素手で触れると、その人の最後の想いが流れこんでしまうから、いつも袖ごしにしか触れない。 春の後宮で、泣かない陰陽師・昴とともに梅壺の更衣の最期を届けてから、季節がふたつ。都の泣き女衆の前に、上臈の女房・大弐の典侍があらわれる。 「内裏では、誰も死なないのですから」 月に米三石。露の新しい務めは、昼は樋洗として後宮の御まるを洗い、夜は喪屋で「死んでいない者たち」に付き添うこと。内裏で死んだ者は、帳面の上で里へ下がる。この後宮で死ぬことを許された者は、ひとりもいない。 喪屋に眠っていたのは、里へ下がったはずの樋洗の娘・いと。そして夜明けごとに、誰もいない洗い場で七つの樋箱が洗い上げられていた。 「姉さんは、すぐ戻ってくるんだから」 姉の帰りを信じて泣こうとしない妹・まつ。四晩続けて樋箱が消えたと嘆く、唐菓子好きの更衣・千種。井戸端に流れる、ひとつ、ふたつと数える歌。 死者が見える昴と、幽霊がまるで見えずに塩ばかり撒く滝口の武士・猛とともに、露は丑の刻の洗い場に身をひそめる。 露を呼ぶのはやめてほしいと、昴は典侍に願い出ていたらしい。白玉のような顔は、相変わらず何も教えてくれない。 典侍の口からこぼれた、母のこと。 ――あなたの母君も、かつて同じお務めをしておられました。 叔母の時雨は、ただくり返す。向こうで、自分の涙だけは流すんじゃないよ。 そして夜ごと南の清涼殿へ通う猫は、なぜか上等な香木の匂いをまとって帰ってくる。 泣かない妹と、眠らない姉。夜明け前の数え歌が、後宮の嘘をひとつだけ本当にする。 腹ペコ泣き女と泣かない陰陽師が拾いあげる、ふたつめの「最後の想い」。 ※『袖の露 ―泣かない陰陽師と、腹ペコ泣き女―』の第二部です。この話からでもお読みいただけます。 ※平安時代をモチーフにした、架空の世界の物語です。
袖の露 ―泣かない陰陽師と、腹ペコ泣き女―
mekoneko/著

総文字数/31,957

後宮ファンタジー7ページ

第70回キャラクター短編小説コンテスト「再会から始まる和風後宮ファンタジー」エントリー中
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人生でいちばんおいしかった椿餅は、七つのとき、知らない男の子の袖から出てきた。  平安の都には、弔いに雇われて泣く「泣き女」という仕事があります。十七歳の露(つゆ)は、葬列のいちばん後ろまで声の届く、腕利きの泣き女。ただし、涙は流しません。死者に素手で触れると、その人の最期の想いが流れこみ、本気で泣いてしまうから。だから死者には、いつも袖ごしにしか触れないのです。  帝にいちばん愛された妃、梅壺の更衣の葬儀。露はうっかり触れて、うっかり口走ります。 「この方、寝床で亡くなったんじゃありません」  凍りつく広間に、露の腹の虫が盛大に鳴りひびく。そこへ無言で椿餅を差し出したのは、泣かない陰陽師・昴(すばる)でした。  立后を目前にした後宮に、亡き梅の方の霊が出る――。昴の手引きで下っ端女官として潜りこんだ露は、星の記録と、梅の花びら一枚と、ゆるがぬ食い意地を手がかりに、隠された死の真相を追いはじめます。期限は立后の前夜。それまでに想いを晴らせなければ、梅の方は怨霊になってしまう。 「向こうで、自分の涙だけは流すんじゃないよ。流したら、帰ってこられなくなる」  叔母の言いつけの本当の意味を、露はまだ知りません。 【登場人物】 露……十七歳の泣き女。声は出す。涙は出さない。たとえ話は、だいたい食べ物。 昴……陰陽寮の見習い。死者が見える。白玉みたいに整った顔で、泣きもしなければ笑いもしない。なぜか袖から椿餅が出てくる。 猛……滝口の武士。昴の幼なじみで、腰にはいつも握り飯。幽霊は怖くない。見えないから。 時雨(しぐれ)……露の叔母。都でいちばんの泣き女にして、都でいちばん銭勘定にうるさい女。 かぐや……亡き梅の方の白い唐猫。毎晩、誰もいない渡り廊下で鳴いている。 【見どころ】 ・泣くのが仕事の娘と、泣かないと決めた青年。凸凹コンビの後宮謎解き ・丑の刻にだけ渡れる「夜の後宮」。死者のいる灰色の世界を、白い猫が道案内 ・古今和歌集の名歌と、渡せなかった一首。梅の香りでつながる、ひと月遅れの恋の歌 ・彼女は覚えていない。けれど彼は十年間、袖に椿餅をしのばせてきた 「袖の露」とは、袖を濡らす涙のこと。 泣けて、笑えて、おなかがすく。一気に読める約三万二千字で完結します。
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