悪役令嬢に転生した干物女は酒の肴を食べたい。

 私たちは、お祝い料理用の食材を求めてチョコザイナー領内にある市場(マルシェ)に来ていた。

 フローレンス領は野菜メイン、ユージーン領なら魚がメインという感じで、それぞれの領地の得意な特産物が並ぶ。

 チョコザイナー領は麦と香辛料を得意としている。
 チョコザイナー家の護衛もついてきてくれて、みんなでめいめい食材を探していく。

 ミゲルは早速、当初の目的を忘れて串焼きをほおばっている。
 口のまわりは肉の脂でベトベト。
 姉ちゃんの結婚を祝うんじゃなかったんかい、ミゲル。

「くーーー! カインも来ればよかったのにな。山クマの香味焼きめちゃくちゃウメェ!」

「カイン王子は先月からグレアス王国で留学中だもの。オーキナの友好国だから親交を深めるためにって。普段ちゃらんぽらんでも、ちゃんと国のこと考えているのね」

「おれには真似出来ないよ。すごいねぇ」

「ミゲルも一応、次代の伯爵でしょう。お父上のあとを継ぐなら、王家に仕えるんでしょ。クロムがすでにそうだし」

 クロムはカインの補佐官をしている。
 カインはすぐ逃げるから、仕事が後ろ倒しになる。
 きちんと仕事をさせようとして、真面目なクロムは毎日胃が痛いと嘆いている。がんばれ弟。

 雑談しつつ、露店を見て回る。
 海外旅行番組に出てきそうな感じで、木箱に山積みの果物や香辛料たち。 

 映えなんて意識しない、本当の山積みだ。
 薄い板に手書きした値段ボードがさしてある。

 私の目は山の中の一つに釘付けだった。
 小ぶりで赤みの強い豆。

「この豆、アズキに似ている気がするわ。ねえおじさん。これは普段どう料理しているの?」
「おぅ、この赤マメは俺んちじゃスープに入れとるぞ! あとはサラダ。煮込むと赤い色がスープに出て、柔らかくなるんだ。嬢ちゃんのほっぺたが両方共落ちちまうかもな!」

 商人のおじさんは自分の商品に自信大。
 カッカと腕組みして大笑いだ。
 聞いたところ本当に小豆に似ている。
 こんなところも中途半端に日本要素がはいっている。ありがとう、乙女ゲーム開発チーム。