やっぱり……間違えたかな。
おそるおそる瀬戸山の顔に視線を移す。驚いた顔をしているだけで怒っているようには見えない。


「あ、えーっと……、そういう考えも、ある、かも」

「……そう、だな」


しどろもどろに答えると、瀬戸山はなにか考えるようにして前をむいた。
……怒ってる、ってわけじゃ、ないのかな。

瀬戸山はそれ以上なにも言わず、駅に向かって無言で歩く。

なんだか妙な空気のような気がして、居心地が悪い。
私のせいなのかもしれない、と思うと気が重い……。

やっぱり、言わないほうがよかったのかも。私にはわからない事情があるかもしれないのに。


でも、諦めたように笑う瀬戸山に少しでも、笑ってほしくて。


すごく、自分勝手な思い。


無言のまま歩き続けて、駅が見えてくると瀬戸山が「手紙」と小さくつぶやいた。


「え?」

「お前、あの、松本との手紙、受け取ってるんだよ、な」

「あ、え、と、たま、に?」


ドクンと胸が跳ね上がった。
……なんで、急にそんなことを確認してきたんだろう。しかも、そんな神妙な顔で……。

じいっと見つめられる瀬戸山の視線に、不安と恐怖が湧き上がって目をそらしたくなる。けれど、そんなことして余計に怪しまれるのは……困る。


「そう、か」

「それが、どうか、した?」

「いや、別に。知ってそうだなーって思っただけ」


急にへらっと笑って、「バラすなよ」と私のお団子頭に手をのせる。