「セト?」
でも、と後をついて行こうとすると、誰かに呼び止められた瀬戸山が振り返って、私も同じ方向に視線を移した。
「あれ? 今から帰るのー?」
「おー」
女の子が、ひとり。
見たことない女の子は“セト”と呼んでいたから瀬戸山と同じクラスかな。
少し赤みのある茶色の髪の毛は、ふんわりとカールされていてかわいい。目鼻立ちもはっきりしていて、きれい系の女の子だ。
「駅まで一緒に行こうよ」
少し離れているから、私のことに気づいていない様子で瀬戸山の隣に並んだ。とても、自然に。
……いいんだけど、なんだこのもやっとしたこの気持ちはなんだろう……。
「あー、無理。俺、黒田と帰るから」
ぼんやりと、友達の女の子と帰るんだろうなと思ったとき聞こえてきた声に、顔を上げた。
「誰、黒田って」
「黒田」
首を傾げる彼女に、瀬戸山が私を見て指をさす。
彼女は私を見て、誰? と言いたげな顔をした。
「え、や、私、いいよ」
「なんで?」
なんで、と言われても……。
「なに? 彼女? いつの間に」
「いや、ただの友達だけど。さっき会ったから一緒に帰ろうとしてたとこ。だから悪ぃな」
じゃーな、と言ってスタスタと歩き出した瀬戸山を慌てて追いかける。
いいのかな、とは思ったけれど……はっきりと私の名前を告げられただけに無視するわけにもいなかい。
「そっかー、じゃあねー」
女の子はほんの少しがっかりしているように見えたけれど、明るい声で瀬戸山に挨拶をして、私に会釈して踵を返した。