「いいじゃん、好みは人それぞれなんだし」
江里乃が笑いながらではあるけれど、そう口を挟む。
「まあ、そうだけどー」
ハッキリと言い切った江里乃に、みんなは笑うのをやめて「なんて曲だろうね」なんて言い出した。さっきまであり得ないとバカにしていたのがウソみたい。
暫くするとチャイムが鳴り響き、みんなが自分の席に戻っていく。
「あ」と声を上げて、江里乃が振り返った。
「希美、帰り一緒に雑貨見に行かない?」
「うん、いいよ」
江里乃とは、1年の時に同じクラスになってから、ほぼ一緒にいる。
こうしてふたりで帰りに遊びに行くことも、江里乃とが一番多い。
江里乃の優しさや明るさは大好きだ。友達が多くて、生徒会副会長で、先生からも信頼のある江里乃の友達であることは、嬉しく思う。
だけど……ホントはね、江里乃のことも、羨ましいと思ってる。
ふと自分の心の中にもやっとしたなにかが生まれてしまうときがある。
私がデスメタルをかけたとき、教室に戻って来てみんなに笑われた。
「でも、ちょっと、かっこよくない?」と言うと、友達はみんなして「ないよーないない!」と笑うだけだった。
もしもそれが私ではなく江里乃であれば、みんなの反応は違ったかも知れない。さっきのように「そうだけど」と少しは共感を示してくれたかもしれない。
……最低だなあ、私。
頭を軽く振って、変な嫉妬を振り払った。