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何回かやりとりをしている間に、知らなかった瀬戸山を知っていく。
彼は江里乃に伝えているつもりなんだろうけれど、私だけが知っていて、それは誰も知らない。
……変な、感じ。
自分の返事が、私の言葉なのか、江里乃を装っているのかわからなくなってくる。
オマケに。
「よ、黒田」
「……こんにちは」
「はは、なにそれ他人行儀だな」
放送委員の会議が終わって靴箱に行くと、ちょうど帰りなのか瀬戸山に出会った。
あの日、言葉をかわしてから瀬戸山は私を見かけるたびに声をかけてくる。
挨拶程度だけれど、多分私が江里乃の友達で、ふたりの交換日記を知っているから、という理由だろう。
「今帰り?」
「委員会で。瀬戸山も帰りでしょ?」
「せっかくだし一緒に帰ろうぜー」
……え?
無言で振り返った私に瀬戸山が「嫌なのかよ」と少し不満そうな顔をしたから慌てて「そうじゃないけど」と、取り繕っておいた。
……嫌なわけじゃないのは本音。
ただ、あまり目立ちたくないっていうだけ。
瀬戸山と接点のなかった私が一緒に帰ったら……いろんな噂をされそうだし。
瀬戸山はそういうの気にしないのかな……。
自分だって、江里乃が好きなのに、私なんかとあらぬ噂を立てられていいの?