「黒田ね。だから、黒田、もちょっと自分の意見言った方がいいぞ。損するぞ。松本の話はなんか事情があるかもしんねーからいいとして」

「はあ……」

「お前やる気あんのかよ」


なんのやる気だ。

真剣な表情に、思わず吹き出してしまうと「笑うところじゃねえし」とちょっと恥ずかしそうな顔をした。


「元彼かなんかの話も、いやだったら断れよ」

「でも、急にそんなこと言っても、みんな楽しそうなのに」

「ほんっと人がいいな。ただの弱虫かどっちだよ。まあ、黒田の話聞いてると、悪いことでもねーのなか、とは思うけど……」


一応、心配してくれているのかな。

……言葉はすごくストレートなものばかりでちょくちょく胸をえぐってくるとはいえ。

それは“江里乃の友達”だからかもしれない。それでも、悪い気はしない。

さっきまで逃げ出したいくらいだったのに、不思議。


「お前、何番線?」

「2番。瀬戸山は?」

「俺1番。じゃあここで。気をつけてな」


さっさと駅に着けばいいのに、と思っていたけど、話し始めたらあっという間だったな。


「あ」


反対方向だから、と背を向けようとしたとき、瀬戸山が声を出す。
振り返ると「お前さ」と前置きをして笑った。