……いや、帰れるのはいいんだけど。
並ぶ私達の間に流れるこの微妙な空気。どういうことなの。
まさか、瀬戸山も同じタイミングで帰るなんて……。
「行くか」
「え、あ、はい」
思わず敬語で返事をして、踵を返す彼について行く。
駅まで一緒に行ってくれる、ってことなんだろう。嫌われていると思うのに、放っていかないんだ。
かといって隣を歩くのは気が引けて、一方後ろをついて行った。
「なんで離れてんの?」
「あ、足が、短いから、かな」
怪訝な顔をして振り返る彼に、しどろもどろ答える。
あきれたようなため息をつかれたけれど、なぜか私を待っていてくれて、隣をゆっくりと歩いてくれた。
……優しい、のだろう。
女の子にもてるのも頷ける。
好意を示してくれているわけじゃないのはわかるのに、優しさは感じる。
でもそれを素直に受け入れられないのは、後ろめたいことがあるからだ。
あとは、嫌われていると思うから。
無言なのは気まずいけれど、さっきみたいな言葉を投げかけられるよりはずっといい。
駅が近いような、遠いような。
不思議な感覚で彼の隣を歩いた。