「なあ」
ため息を落としたところに、呼びかけられて顔を上げると、後ろには瀬戸山が立っていた。
え? なんで?
オロオロし始める私を気にすることもなく、ポケットに手を突っ込んだまま瀬戸山が「あんた、いつもあんなんなの?」とそっけない口調で私に問いかける。
これまで何度か、瀬戸山の顔を見た。
放送室の前でぶつかりかけたり、靴箱で話したり。
だけど、今目の前にいる瀬戸山の表情は初めて見る。
冷たくて、バカにされているような、見下されているような、そんな瞳で私を見下ろしている。
なんで、そんな視線を向けられなくちゃいけないのか、わからなくて戸惑うと、なにも言えなくて、それは余計に瀬戸山には苛立ったらしかった。
音にならない舌打ちが、私には聞こえた気がする。
「あの、昼の曲のリクエストってのも、松本じゃねえの? なのにあんなふうにごまかしてんの?」
違う、とは言えない。
だけど、そうだよ、なんて言えない。
彼の視線が鋭くて思わず俯くと、「友達のせいにしてんのかよ」とあきれたような口調でつぶやいた。
「さっきから、話全部ごまかしてるだけだし、自分の意見ねえの?」
ぐっと唇を噛んで、涙が出てしまいそうになるのを堪える。
こんなところで、こんなことで、泣いたらダメだ。
「そう、いうわけ、じゃ……」
「目、見て話せば?」
びくりと肩が震える。