「あれあんたの趣味?」
「え、と……」
「リクエスト曲らしいよー。すごいよね。私よくわかんないけど、人気なの?」
優子が私の代わりに返事をして、盛り上がり始める。
好みなのかと思ったけれど、彼らも印象に残っているだけだったらしく、私の流した曲についてけらけらと笑った。
……別に、いいんだけど。
「リクエストって、友達の?」
隣からの言葉に、「え?」と返すと、瀬戸山が「友達のリクエストだろ?」と再確認するように聞いてきた。
「なんかリクエストボックス? なんかあるんだよね、そこに入ってるんでしょ?」
「希美優しいからかけてあげて、だから毎週リクエストくるんだよー」
そういうことにしてたけど。
友達が勝手に返事をし始めて、「や、まあ、えーっと」と誰も聞いてないのにごもごもと言い訳じみたことをつぶやいてみる。
瀬戸山に向かって。
手紙でそんな話したよね、確か。
江里乃のリクエストだと、思ってるんじゃないだろうか……。
じっと見つめる瀬戸山の視線に、脂汗が止まらない。
絶対怪しんでる! 疑ってる!
「あ、の、飲み物、どうする?」
「俺コーラ!」
慌ててメニューを手にしてみんなに問いかけると、目の前の男の子が明るく答えてくれたお陰で、みんなの話題もそれた。
胸をなでおろしたけれど、隣の瀬戸山を見ることはできなかった。