私達の近くにやってきた4人のうちのひとりが優子となにやら話を始める。
このあとにどこに行くかとか、そんなこと。
落ち着かなくてちらっと様子をうかがうように隣を見ると、瀬戸山と目があう。
「あ」と言うように口を開けた瀬戸山は、女の子を順番に見て、江里乃がいないことにがっかりしたのか少し肩を落とした、ように、見えた。
私が江里乃の友達、ということは彼の脳内にインプットされているようで、ちらちらと私を見てくる彼に気づかないふりをする。
ここで江里乃の話をされるのは困る。
というかもう彼と接点を持ちたくないんだけど!
こっちに来ないで! お願いだから!
「んじゃそろそろ行く?」
「どこ行くの?」
「カラオケー」
優子の声に、友達が腰を上げながら聞いて、返事に私は少しほっとした。
カラオケなら……話はしなくて済むかもしれない。歌うことは苦手だけど、みんなで仲良くご飯とかよりよっぽどマシ。
全く歌わなかったら場を白けさせちゃうかもしれないけど、はやり数曲くらいなら歌えるし。あとはみんなが歌っているのを聞いていればいい。
チラチラと瀬戸山に視線を送る友達に憂鬱な気持ちを隠しながらついて行く。
期待する友達に心のなかで“彼には好きな人がいるんだよ”とこっそりと告げてみるけれど、聞こえるはずもない。
男の子と話をしている彼の背中は、どことなくめんどくさそうで、江里乃がいたらどんなふうになったのかな、なんて思った。