「本当に、優子たちってば素直なんだからなー」

「あはは、確かに遠いからね」


口をとがらせる江里乃を明るくなだめつつ、職員室に向かう。
瀬戸山からの手紙は……放課後でもいいか。

職員室に入って先生に声をかけると、奥からダンボールを2ケース手にして戻ってきた。


「はい、よろしくなー」


手渡されたダンボールはひとつで十分な重さ。
ずしんと乗っかってきて思わず前のめりに倒れそうになった。


「……おっも……」

「ほんっと、台車とかないのかなー、希美、大丈夫?」


慣れているのか、江里乃は呆れながらスタスタと生徒会室に向かっていく。
重すぎて正直話す余裕もない。生徒会も大変だ。


っていうか……。


「生徒会室って、理系コースの校舎、なの?」

「なに今更。そうだよ、ここの3階」


理系コースの校舎であることも困るんだけど、3階という言葉にめまいがした。
この荷物持って……階段で上がるんですか……? なんで職員室は1階なの。なんでエレベーターがないの。

いや、それも困るけど、理系コースで瀬戸山に会ったりなんかしたら……!?

挙動不審になりながら理系コースに足を踏み入れる。
江里乃がなにか話しかけてきたけれど、「うん」とか「あー」とか返事するだけで、内容は全く頭に入ってこない。

重すぎて手がどうにかなってしまいそうだけれど、足を止めるわけにもいかない。