——いや、そんなことよりも。
ポケットの中に突っ込んだメモを取り出してもう一度眺める。
『好きだ 瀬戸山』という、短い単語を何度も脳内で繰り返し読んでみた。
透かしてみたり、裏返したり。
そんなことしたってこれ以上の情報はなにも記されていない。
あの瀬戸山が、私を? やっぱり信じられない。
……話したことはないけど、正直苦手だなって思ってる、瀬戸山が?
1年のとき、クラスの女の子が『理系にかっこいい人がいる!』ってはしゃいでいた。
それが、瀬戸山 潤。
確かに目立つ容姿をしていたから一度見ただけで覚えてしまった。
そこそこ高い身長に、真っ黒でサラサラの髪の毛。以前は短髪だったけれど今は肩まで伸びていてときどき後ろで一つに括っている。
切れ長の瞳に、黒縁眼鏡。
確か帰宅部。
そして、確か、彼女はいない。
けれど、定期的に告白されたとか、また振ったとか、そんな噂を聞く。
高校に入ってから彼女が出来たなんて噂は聞いたことがないから、誰とも付き合ってないのだろう。
いつ見ても、友達に囲まれている。男女問わずに、周りにはいつも人がいる。
……なんで、そんな人が……私にこんなものを?