江里乃だったらどんなこと書くだろう。
はっきり口にするだろう。聞かれたことにははぐらかすことなく答えるだろう。

それくらいしかわからなくて、結果そっけないものになってしまったけれど……大丈夫かな。


「こんな、ウソ長くは続かないのわかってるのになぁ……」


手紙を入れるのも前ほど緊張しなくなった。
ぱたんと彼の靴箱を閉じてひとりつぶやく。

そう、続くわけがない。いつかはばれてしまうはずだ。
直接ウソをついてしまった手前、うまい言い訳も度胸もない。ヘタレな自分が憎たらしい。

でもこうなってしまったからには、出来るだけのことはしなくちゃ、という結論に至った。自業自得なのだから、いつまでもうじうじしているわけには、いかない。


江里乃にがっかりして好きじゃなくなった、なんてことにはならないようにしなくちゃ。
江里乃の真似をしている私でも、彼にとっては江里乃なんだから。

そして、できれば江里乃が瀬戸山のことを好きになればいいな、と思う。

そしたら本当のことが言えるかも。

ウソに傷つくかもしれないけれど、笑っていてくれるかもしれない。私が怒られるのは当然だから構わない。嫌われたっていい。


ただ……これはかなり難易度が高いよねえ……。

そもそも私が瀬戸山のことを知らないうえに、江里乃は私が瀬戸山のことを好きだと思ってるし。
どうしたらいいかなあ。

とりあえず、今はできることをしなくちゃ。
わからないことは、その間に考えよう。

瀬戸山との交換日記を続けること。仲良くなりすぎず、嫌われないように気をつけること。

あとは、江里乃に彼氏ができないように祈るしかない。


……返事を見たら、彼はどんな顔をするだろう。

“私”とやりとりしているわけじゃないのに、想像して楽しみになるなんて……変なの。