表情だけで正直な人だなあ。この前の真っ赤な顔もそうだけれど、返事がなくて落ち込んでいると言っていた友達との会話を思い出しても、わかりやすい人なんだろう。


「あの、友達、は? あの、その、生徒会の……」

「……え、と」


びくりと肩が震えてしまった。
動揺を隠しきれないまま今度は私が「あー」とか「えー」を繰り返す。


「江里乃、……のこと、だよね」

「あ、うん、そうそう! なんか、あの! その手紙とか」


手紙って……知っているから意味がわかるけれど、知らなかったら意味わからないんじゃないかな……。


「え、と……」


と、とりあえず……ここは、どう返事をするのがいいだろう。
知っていることにするのがいいのか。知らん顔するべきなのか。


「あ、でも……いや、その……ちょっと彼女のことが、気になってて……返事がない、いやそうじゃなくて!」


返事に悩んでいると、瀬戸山がひとりで勝手にあたふたし始める。

手紙のことを言ってはいけないんだと思ったっぽい。けれど、フォローの言葉も全くフォローになってなくて、むしろ墓穴を掘っている。


必死な姿。それだけ、返事を気にしているんだろうな。


勘違いでした、とか伝えたら、彼はどんな顔になるんだろう。

怒らせるのは嫌だと思っていた。だけど……怒ってもらえたほうが……マシかもしれない。
焦る彼、頬を染める彼、気になって仕方がなくて待っていられないでそわそわする彼。

これらが、全部なくなって、歪んだ顔になってしまうのかもしれないと思うと、胸がひどく、傷んだ。