どうしよう……。
と、とりあえずこの場は立ち去るしかない。
心は痛むけれど、本当に申し訳ないけど、周りに流されて自分の意見もろくに言えない意気地なしの私には、この現状はハードルが高すぎる。
そう思って踵を返すと、背後から「あ」と私を引き留めるような声が聞こえてしまい、思わず足が止まる。
そろりと振り返れば、やっぱりそこには瀬戸山が、いた。
「お前……あの……」
「な、んでしょう、か」
声が震えてしまう。
初めて言葉を交わしていることに加えて、後ろめたいことがあるから。
瀬戸山は少しだけ迷った表情になって「あー」とか「えー」とかを繰り返していた。なにを言われるのか気が気じゃない。
私に話しかけてくる内容なんて、江里乃か手紙のことしかないのだろうけれど。
どきどきしながら彼の言葉を待っていると、「元気?」と意味のわからない質問をされた。
……えーっと。
元気じゃないのだけれど、とりあえず「はい」と適当に返事をすると、気まずそうな顔をして瀬戸山がまた「えー」とか「あー」とかを繰り返す。
突拍子もない質問に、心が幾分か落ち着いてくる。
じっと彼の顔を見ていると、表情がくるくると変わる。なにを言おうとしているのかまではわからないけれど、なにかを私に伝えたいのはわかる。
それをどう切り出すか、どう言葉にするか、悩んでいる。