お弁当を片付けて、いつもより少し早めにお昼の放送を切り上げる。
鍵を返して、時間を確認するとすぐに靴箱に向かった。

返事は早いほうがいい。1週間も待たせてしまったのだから。


ノートを見られないように抱きしめて廊下を歩く。

まだお昼休みだからか学生が何人かいたけれど、靴箱のあたりは多分……少ないはずだ。タイミングが合えば、うまく返事を渡すことができるかも。


足音を忍ばせて、理系コースの靴箱を覗きこんだ。

誰もいませんように……、という私の祈りは見事に、これでもかというほどぶち壊される。
人影。それも……ただの人じゃない。

……なんで! ここにいるの!

自分の靴箱を覗きこむ瀬戸山の姿に、口から心臓どころじゃなくて臓器全部が出てくるかと思った。

瞬時に物陰に隠れたけれど、心臓の音が激しすぎて靴箱に響き渡っているからばれてしまうかもしれない。

耳のすぐそばでドッドッドッドと今までないほどの心拍音が聞こえる。


なんで、なんで今、こんなところに瀬戸山が!
タイミング悪すぎる。

手元のノートをもしものためにお弁当箱の入る巾着に押し込んだ。
このまま立ち去るしかない……。さすがに本人に“今まで手紙のやり取りしていたのは私なんです”と伝える勇気はない。

実は私でしたーって今ノートを返したところでお前誰だって思う。私だったら思う。

目の前で罵倒されるのも怖いし、落ち込まれるのも対応に困る。