……なんてバカなんだろう、私。


憂鬱な気持ちが少しでも吹き飛べばいいのに、といつも以上に激しいロックを流しながらメモを見つめた。そして、こっそり持ち歩いているノートを開く。

いつもよりも急いで書いたような字。
この返事を書いたとき、彼はうれしかったりしたのかな。喜んでいたのかな。

あんな一方的な返事だったのに。
そのくらい、好きだったんだろう。好きなんだろう。


江里乃のことが。


……おかしいと思ったんだ。
だって、あの瀬戸山が、この私を好きになるなんておかしいんだから。

接点がなさすぎる。そんなことはじめからわかっていたのに……。


なにかのきっかけで、瀬戸山はこの様子を見てあの席を使っているのが私ではなく絵里乃だと思ったんだろう。

勘違いしてもおかしくない。私は授業が終わると誰よりも早く教室を出て行っていて、江里乃が私の席の荷物を教室まで持って行ってくれていたのだから。


誰が見たって、あの席を使っているのが江里乃だって思うはずだ。

あの日、靴箱で私に話しかけようとしてきたのも、江里乃の友達だからだろう。いつも一緒にいたから、江里乃を見ていれば私のことを知っていてもおかしくない。

江里乃のことを聞きたかったのかもしれない。

放送室の前で会ったとき、あんなに顔を赤くしたのは、ただ単に手紙がばれたかと思ったんだろう。


「どうしようー……」


机にうつ伏せになってひとりぼやく。