次の日も朝早く学校に来て、家にあったメモ用紙に書いた返事を靴箱にそっと置いた。

いつもはルーズリーフだったけれど、薄ピンクのメモ用紙だからか、“手紙のやり取り”をしている感が増して、朝から胸がうるさいくらいだった。


別に、付き合うわけじゃない。
ただの友達。しかも手紙だけの友達。


……あんな条件付きで気を悪くはしないだろうか。


そう思うけれど、これが今の私の精一杯の素直な気持ちだから、やっぱり外せなかった。

手紙だけのやりとりで、瀬戸山のことを知ることができるかどうかもよくわからないけど、それでも、このまま終わってしまうよりもいいと思ったから。


少しずつ、彼を知るくらいでちょうどいい。
私には。


噂になるのはやっぱり嫌だし、そんなふうにからかわれたら、瀬戸山を知る前に逃げ出したくなってしまうかもしれない。

誰もいない教室の自分の席に腰を下ろして、窓から見える景色を眺める。


まだ、トクトクという自分の心音が聞こえる。
気を抜くと口元が緩むのがわかる。
頬がほんのりと赤くなっているような気がする。


あの手紙に、瀬戸山はなんて返事をくれるだろう。

最後に疑問符をつけたのは、内容に気を悪くしても返事がもらえるとおもったから。なんでもいいから、反応が欲しいと思ったから。




期待通り、瀬戸山はその日のうちに返事をくれた。
放課後の相談ボックスには、小さな手のひらサイズの真新しいノートが一冊。

投函口に入るサイズをわざわざ選んだのだろう。見たことがあるから、今日売店で買ったばかりのノートかもしれない。

ぺらりとめくると、1ページ目に瀬戸山の文字があった。