「なに、これ」


ぷっと吹き出してしまった。

どうしてこんな場所に、と思ったら……この手紙を入れに来てたんだ。

こんな内容をわざわざお昼に入れに来るなんて。さっき手紙を受け取ったばかりなのに。

慌ててその日のうちにこれを……。そんなに、焦って。


「ふはっ」


真っ赤な顔とこの手紙。
ふたつが重なって笑いが止まらなくなった。

“先走った”というフォローと“本音だけど”っていうバカ正直な言葉。


友達、か……。


必死な文字と言葉に、彼のイメージがまた少し変わった。

確かに、私は彼を知らない。
知りたいとも思っていなかった。知ろうとも思わなかった。

だって知っても関係ないと思ってたし。


“諦められない”


まっすぐだ。すべてが。
言いたいことをはっきり口にする人だと思っていたけれど、バカ正直なのかもしれない。自覚なんてないのかも。

告白されたらはっきり断るくせに、自分が好きになったら一直線。

そう思うと、かわいいなあ、と思ってしまう。
私に対してだから、むず痒い恥ずかしさもある。だけど嬉しいなあって、思う。


“友達からでもいいから”


友達ってどういう関係のことを指しているのだろう。急に声を掛け合う関係は多分無理。付き合うことになるのとそんなに変わらない気がする。

でも、ちょっとだけ……“瀬戸山”に興味もある。
私の知らない一面を、もう少し、見てみたい。


「結局……流されてるっていうのかな、これも」


さっき書いた自分の返事をポケットから取り出して、つぶやく。
丸めて捨てちゃおうかと思ったけれど、そうすると瀬戸山からの手紙もごみになってしまう。

しばらく見つめたまま考えて、“ごめんなさい”と書いた自分の返事の部分だけをぴりぴりと破り取った。