「あーいた、セト!」


瀬戸山の向かう方向からひとりの男の子が顔を出して声を上げる。


「探してたんだよ、次の授業さー……って、なに赤くなってんのお前」

「なんでもねえよ。なんだようっせーな」

「は? なに? なにテンパってんの。なにがあったんだよ」


ケラケラ笑いながら突っ込む友達に、瀬戸山が邪魔そうに手を払う。
思わずじっと眺めていると、不意に瀬戸山が振り返って私の視線とぶつかった。


友達が突っ込みたくなるくらい真っ赤な顔は、少し離れた私にもわかる。


ぱっと視線をはずされたけれど、私は目をそらすことができなかった。


なんで、そんなに赤くなるの。そんなキャラじゃないじゃない。そんなキャラだなんて、知らなかった。

好きなわけじゃないのに、意外な一面を見たせいで、胸が苦しい。


瀬戸山が友達と話しながら去っていくのをずっと見つめていたけれど、瀬戸山はもう振り返らなかった。


……でも、なんでこんなところに?
理系コースとは校舎も違う。職員室に用事があったとしても、放送室の前を通ることなんてないはずなのに。

もしかして。

扉の前にある相談ボックスが目に入って、手にとって振ってみるとカサカサとなにかが入っている音がした。

この前、瀬戸山から手紙を受け取った。
他になにも入ってなかったし、この数日で誰かがなにかを入れたとも考えにくい。


もしかして。

背中のフタを外して、中に入っていた紙を取り出した。
小さく折りたたまれたルーズリーフ。

ドキドキするのはどうしてだろうと自分に問いかけながら、それをゆっくりと開く。