自分のことを言われているのかと思うと、笑顔も引きつってきた。
これが私のことだとバレたら……どうなってしまうのか。


……こうして考えると、あの人からの告白を断ろうとしている私って、ものすごい身の程知らずなんじゃないかと思えてきた……。


何人かの女の子を振ってきている瀬戸山だよ?
私が瀬戸山の告白を断ったとか知られたら……女子に総スカン食らってもおかしくない!


「まあそれでも1年の女の子は引かなかったんだけどね。かわいかったし」

「うわーすごい。押すねえ」

「ほんと、すごかったよ。“付き合ってないなら、私ととりあえずでも”って。でもさすが瀬戸山“俺のこと好きって言ってくれた人に、そんなことできない”って! もうなんなのかっこよすぎじゃない?」


——『好きな子がいるから、それは君じゃないから、悪いけど無理』


なんて、直球なんだろう。
話を聞いただけで、瀬戸山が誠実なことがわかる。目にした優子たちが興奮するのも当然だ。


「最後は女の子泣いちゃったんだけどね、その子をおいて立ち去る瀬戸山のかっこよさよ。思わせぶりなことはしないんだから、にくいわー」


曖昧に、断るだけじゃなくて、はっきりと真実を口にする。

誰も彼もがそうして同じような印象を相手に与えるとは思えない。けれど、彼はそんなの関係なく嘘偽りなく相手に告げる。


“好きだ”
“どういう意味?”
“ずっと気になってた”


ぼんやりと瀬戸山からの手紙を思い出す。
彼の、嘘偽りのない言葉たち。


その返事に、適当に濁した言葉で伝えることが、ひどく失礼に思えた。