「すごいの見ちゃった!」


6時間目が終わってジュースを買いに行くと教室を出ていった優子と一緒に行った友達が、興奮気味に戻ってきた。

目をまん丸くして「どうしたの」と問いかける私と江里乃に駆け寄ってきて、「リアル告白」と目を輝かせる。


「渡り廊下のそばで、告白シーン見ちゃった」

「マジで?」


小声でそう言った優子に江里乃も思わず食いつく。
私も心の中では食いついていた。


「しかも、相手はあの——瀬戸山!」


ぴくり、と体が反応する。

ここで瀬戸山の名前が出てくるなんて、心の準備ができていなかった。

江里乃が私の方を見るのがわかって平静を装いながら「すごいねえ」と感心して見せた。

これ以上誤解されるのは避けたい。
どうしてこう、タイミング悪く瀬戸山の名前を聞くことになるんだろう……。


「多分、後輩。上履きの色が違ったもん」

「へー、で、結果は?」

「それがまたすごいのよ。後輩の女の子も結構押せ押せで、好きです! って直球で、瀬戸山がまあ、毎度のことのように断ったら“なんでですか?”って」


へえーっと思わず江里乃と声がかぶる。

……そんなふうに体当たりできるなんて。しかも一度断られているっていうのに。今度は心から「すごいねえ」と同じ言葉を口にする。


「でもかっこいいわ、瀬戸山。押してくる彼女に“気になっている子がいるから”って」

「え!? 瀬戸山好きな女がいるの!? なにそれビッグニュースじゃん!」


……なんで、そうはっきり言うかなー。