いつものように放送室に向かって、放送を始める。
さりげなく最近はやりのJ−POPを流しつつ、途中で私の個人的に趣味のロックもかけた。
その間ももちろん、瀬戸山の返事に頭をかかえる。
「あーもう、めんどくさいー」
なんで私なんかに好きとか言うんだろう。
瀬戸山だったらいろんな女の子がそばにいるのに。待っていればいろんな女の子から告白だってされているのに。
何度も同じ疑問が浮かんでは、今更だと自分に言ってルーズリーフを見つめる。
とりあえず、とりあえずだ。返事を書かなくちゃ。
なんて書こうか……いや、待て待て。書いたところで返事をどうするかも考えておいた方がいいんじゃないか?
一週間後の移動教室まで待ってくれればいいけれど、そうじゃない可能性もある。一週間どきどきして過ごすのも疲れるし……。
一週間後にお返事で、なんて書いてもいいかな。
話しかけないでくださいとかは……さすがにひどいよね。
でも、意味を聞かれても……。返す言葉が見つからない。ここは素直に伝えるしかないのかもしれない。
“それ以外に言葉が見つからなくて”
“ほかになんて言えばよかったですか?”
“気持ちはうれしいです”
……どれも感じ悪いような気もしてしまう。
かといって、調子のいいことを書いたら期待させてしまうかもしれない。
お弁当もろくに食べることもできないまま、お昼の放送時間が終わって、とりあえず腰を上げた。
また明日、朝早くこなきゃいけないのかー。
それまでに返事を受け取る方法もちゃんと考えなくちゃ。
憂鬱な気分で放送室を出て、ふと入り口の隣にある箱に気がついた。
滅多に手に取らないそれ。
多分、誰も中を確認することはないだろう。
前に私が手にしたときは、2ヶ月前のものが入っていた。
……これで、受け取ればいいんじゃない?