でも、まだ、信じられない。江里乃を好きだったのに、どうして私なんかを……。


「なにがあるかわかんねーもんだなあ」


ケラケラと笑う瀬戸山。


「どうしたらいいかなーって思ってお前から言わせたらいいんじゃねえかなって思って、苦手な我慢をしたっていうのに、なんだこの結末。最初っから口にしてりゃあよかった。まさかお前がこんなに鈍感だとは」

「そんなのわかんないよ……」

「我慢してたとはいえ、俺結構わかりやすかったと思うんだけど、なんで気づかねえかな。最初の“ごめんなさい”とか、意味わかんねーし。お前のせいで、あんなに勉強した英語んぼテストほとんど頭に入ってこなかったじゃねえか。責任取れ」

「……私だって言ったら、嫌われると思って……」

「わかっててもムカつくんだよ」


グサグサグサグサと本音が突き刺さってきて、なにも言えず俯くしかできなかった。
ごめん、と言えばいいのか。ありがとう、と言えばいいのか。


「……私が、瀬戸山のこと、好きなのも……わかってたの?」

「だってお前わかりやすいし。だから言っただろ。『次はちゃんと言えば?』って。お前ウソ下手な上に鈍感なんだよ。誰が好きでもねえ女を家に呼ぶかよ。キスなんかするわけねえだろ。お前俺をなんだと思ってんの?」

「……はい……」


だって、そんなの思いもよらなかったんだもん。
思っていることをこれでもかというほど包み隠さず言われて、言い訳のしようもなかった。

だけど……その言葉の所々にある瀬戸山の気持ち。
信じていいのかな。こんな夢みたいなこと。