「どこいく? カラオケ混んでるかなー。早く行きたいよね」

「でもとりあえずお腹すいた! カラオケじゃお腹いっぱいにならないしなー」


江里乃と優子がこの後の予定を話し合っていて、私はいつものように意見を言わずに話を聞く。
確かにお腹もすいたけど、早く行かないとカラオケも混んでいるかもしれない。

…どっちがいいのかな。


「駅の反対側のカラオケは? あそこなら駅からちょっと歩くし混んでないかも、そしたらお昼食べてからでも十分かもしれないよ」

「あーいいねそれ!」


決まりー、と優子が声を上げる。
さすがにテストが全部終わるとみんなちょっとテンションが高めだ。

……優子はいつも高めだけど。


「そういえば優子、米田くんとでかけないの?」

「休みに会えるし、今日は友だち優先ー」


……いいなあ。
付き合うと、学校がなくても会えるんだもんね。

瀬戸山を思い出すと、やっぱり切なくなるけれど、それを考えないように「なに歌おうかな」と話題を変えた。


「黒田あぁぁぁぁああ!」


バシーン! と今まで聞いたことのないようなドアを開ける音が教室中に響き渡って、さっきまでうるさかった教室がシン、と静まる。

……っていうか、私の名前、呼ばれた……?

なにが起こっているのかわからず、恐る恐る振り返る。
そこには、誰がどう見ても機嫌が悪い、とわかるような形相で私を睨んでいる瀬戸山がいた。

……おこ、ってる。
手には、私が書いた手紙が握られていて、なにが原因かは一目瞭然だった。手紙……のことで、怒ってるんだ。騙していたのが私だったってわかったから。

全部ウソだったことに、怒ってる。