テスト最終日、ずるいとわかっていながら、この日を選んで瀬戸山の靴箱に入れた。

……ウソ偽りない、最初で最後の、本当の私の返事。


「……1個だけ、ウソかな」


教室に戻りながらぼそっと呟く。
江里乃とのことを応援したセリフは……ウソだ。

うまくいかないで、とは思ってない。だけど、それを応援する気持ちにはまだ、なれない。

最後までウソつきだ、私。でも……このくらいは、許して。


辛いけど、悲しいけど、それでも昨日より体は軽かった。


今日が終わると、終業式まで休みだ。
そしたら冬休みに入って、瀬戸山と顔を合わすのは早くても来年。


だけどきっと、もう、今までのように廊下ですれ違っても声をかけてもらえない。
あの笑顔を向けられることも、ない。

たったひとりの廊下で、歯を食いしばりながら、泣いた。
声もあげずに、拭いもせずに。


テスト最終日。
次第に教室にはクラスメイトでいっぱいになって、テストが始まる。

得意の英語と、家庭科のテスト。


「テスト終わったらカラオケだー!」


江里乃の誘いにみんなが乗った。
今日、ひとりで家に帰らなくていいんだと思うとまた少し気持ちが軽くなる。

もう、好きな歌を歌ってもいいんだ。無理しなくてもいいんだ。


最後のテストの終わりを告げるチャイムが鳴って、思わず笑みがこぼれた。