言ってみてもいいのかな。
大丈夫かな、と不安になる気持ちはなくなったわけじゃない。

……だけど、ウソをつき続けるよりも、今、嫌われたほうがいいかもしれない、と思う。


瀬戸山と、今までやってきたやりとりや会話をゆっくりと思い出す。

ごめんね、交わした言葉も残した文字も……ホントは全部、ウソなんだ。

唇にそっと触れると、瀬戸山とのキスがよみがえる。

どんな理由があっても、あのキスは本物。
そう思うと、あの日が宝物のような気がしてくる。

うん、私——嬉しかったんだ。


——『次はちゃんと言えば? 好きなら好きって。どう転ぶかはわかんねーけど』


どうやったって事実は変わらない。
だったらもう、これ以上逃げたくない。

江里乃や、瀬戸山は、私のことを認めてくれた。流されてふらふらしているだけだって思っていた私に“そうじゃないよ”って言ってくれた。

そう言ってくれる気持ちを、ウソにはしたくない。
嫌われても、もう……話してもらえなくてもいい。逃げちゃダメなんだよね。


机の中からレターセットを取り出して、ペンを握りしめる。
真っ白な、紙に、私の文字を綴っていく。



今までウソばっかりの交換日記だったけど、最後くらいは、ウソのない交換日記で。