「私……江里乃に嫉妬してたの……ずっと、羨ましかった……」

「なにそれ。私のほうが希美に嫉妬してたし。私敵も多いんだけど、希美はみんなに好かれるじゃない。あーでも、希美もたまにはガツン! と意見言えばいいのに! とは思ってたけど」

「……私も、江里乃もうちょっといい方変えたらいいのにって、思ってた」


いつの間にか涙も止まっていて、江里乃と笑い合うことができていた。
……さっきまであんなに苦しかったのに。


「でも、ウソつきだって思うなら、それが辛いなら……楽になってもいいんじゃない? 大丈夫だよ、みんな、希美のことわかってるから。少なくとも、私は、そんなことで希美を嫌いになったりしないよ」

「……ありが、とう」


力なく笑って、ぼんやりと前を見つめる。
涙はもう、出てこない。


そろそろ行こうか、と江里乃が腰を上げて、私も同じように立ち上がりスカートを払った。


教室に戻ると、もうすでにショートルームが終わっていて、私と江里乃の姿に優子たちが驚きながら駆け寄ってくる。


「どこ行ってたの? 先生探してたよ」

「わーマジで? ちょっと息抜きしてた」


待っていてくれたのかな。
優子が私を見て、ちょっと首を傾げながら「ま、たまには息抜きも必要よね」と笑顔を見せる。

……きっと、目が真っ赤だ。
優子もきっとそれに気づいた。だけど、なにも言わずに、気づかないふりをしてくれる。


優しいウソが、すごく、嬉しい。


「あのね……」


さー帰ろう! と荷物をまとめるみんなに、小さな声で呼びかける。
振り返るみんなの顔を見て、ごくりと、唾を飲み込んだ。