「私は、希美のことウソつきだとは思わないよ」
「……ウソつきだよ。自分の意見を言わず、相手に……合わせているだけ」
「それはウソつきじゃないよ。それに、ウソつきは自分のことをウソつきだって、言わないよ。希美がウソつきだとするなら、今、ウソつきだって、言っていることかな」
クスクスと笑う江里乃に、ちょっとだけ涙が止まって、スン、と鼻をすすった。
「無理してるのかなーって思ったことはあるけど、ウソではないでしょ? 希美はいつも、どっちかというと素直だったよ」
「……そんなこと……」
「それがウソだとしても、私は希美のつく、ウソは優しいと思う」
江里乃が階段に座り込んで、私にも座るように促した。
遠くでチャイムが鳴ったけれど、私も江里乃も聞こえないかのように隣に並んで話を続ける。
「確かに……流されやすいところはあるけど……それでも、希美って人を悪く言わないの。私が誰かの愚痴を言っても、絶対同じように合わせたりしない。そういうところ、すごいなって思うよ」
そのまま、江里乃が私のことを教えてくれた。
“ウソは言っててもわかりやすい”
“人を傷つけるウソは絶対に言わない”
“人の気持を優先してくれていただけ”
……そんなの、買いかぶりすぎだよ。
そう言いたかったけれど、江里乃が自信満々に「ね?」と私に笑いかける。
「希美が自分のことをどう思っていたって、私はそう思っている。それでいいんだよ。私が思ってるんだからそれが正解なの!」
「……ふふ、なにそれ……」
思わず笑ってしまうと、江里乃も同じように笑ってくれた。