「……きら、われたかも」


ううん、実際にはわからない。
瀬戸山は私だってわかってないのかもしれない。

だけど手紙は間違いなく“私”に宛てられたもので、今まで交換日記を続けていた“私”は嫌われたんだ。

いくら……瀬戸山が私に話しかけてきてくれても、それを無視して話をし続けるなんて……私にはできない。

江里乃の偽物の私も、私に違いないんだから。
ウソばかりの私だったけれど、それでも。


「私が……ウソつきだから……」


江里乃はただ黙って私の言葉に耳を傾けてくれる。
口にすると余計に止まらない涙が、私の顔を濡らした。


「……どうしたら、いいのか、わか、んない……」


怖くて一歩も踏み出せない。動けない。
どっちつかずなことばかりして、ふらふらしてきたから、こんなことになるんだ。

周りの顔色ばかりを伺って。

はじめから手紙で私じゃないって伝えたらよかった。そしたらこんなに苦しくなかった。
あのときに席を使っているのが私だって伝えていたら……。

違う、そうじゃない。そんなこといまさら考えたってしかたないんだよ。

瀬戸山はたくさん嬉しい言葉をくれたけれど、私はやっぱり、ただ自分の意見が言えない弱虫なだけ。瀬戸山が思ってくれるような私も、ウソなのかもしれない。

前と一緒だ。
矢野センパイに別れを告げられたときと、一緒。

これ以上嫌われるのが怖くて、なにも言わなかった。
わかっていたのに気づかないふりをした。言われる言葉だけを受け止めるだけ。

……私はまた……同じことを繰り返すんだ……。