思い出して頬が赤くなってくるのがわかって、俯いて顔を隠す。
……なにもないことで、こんなふうになるなんておかしい。

なにもなかったんだから。あんな意味のない行為は、なかったのと同じこと。
私の言葉に、瀬戸山はなにも言わなかった。

ふたりで黙ったまま、駅に向かう。
早く、駅について欲しい。早く、瀬戸山と別れたい。

だけど、もう少しだけ一緒にいたい。


「……今日、勉強するか?」

「……いや、今日、は、まだちょっと……」


こんな気持ちで行けるはずない。

……瀬戸山は、どんな気持ちで私を誘っているの? そんなに、どうでもいいのかな、私なんて。
友達として仲良くしてくれるのはうれしい。うれしいから、余計に苦しいなんて……わからないでしょ。


「そっか……そうだな、まあ、ゆっくり休めよ」

「……ありがと」


駅について瀬戸山は、なにか言いたげな顔をしていたけれど、それだけ言って私と反対のホームに歩いて行った。


ひとつ、ウソをつく。
そしたらそのウソをごまかすためにもうひとつ、ウソをつく。

その繰り返しで、どんどんウソが重くなってくる。
流されるままウソをつき続けて……自分で立ち止まることもできないまま。

私はどこまで行けばいいんだろう。どこに辿り着くんだろう。