笑顔が引きつっていないことを祈りながら、思ってもいないことを口にする。

江里乃が悪いわけじゃない。
そんなのわかっている。

江里乃が優子に言ったように、江里乃に嫉妬するのは無意味なことだ。そんなに気にするくらいなら、本人に言えばいい。

わかってる。わかってる。
わかっているのに優子みたいに江里乃と直接ぶつかることもできないし、かといって瀬戸山に向かって行くこともできず、なにもないかのように平気なフリをし続けるしかできない。


もしも瀬戸山に告白されて江里乃が付き合うことにしても、仕方がないこだ、と言い聞かせてウソを自分に刷り込んでいく。

好きになってほしいと、そう言っていた江里乃。
大丈夫だよ、瀬戸山は、江里乃のことが好きだよ。

……昨日米田くんが言っていたコメントのことが気になるのは確かだけれど、それをきっかけに、瀬戸山はずっと江里乃を見ていたんだろう。

その中できっと江里乃のことを好きになったんだと思う。

“自分がある”と瀬戸山が言っていた。
それは間違いなく、江里乃に向けられた言葉だ。

私のことも、あんなふうに言ってくれる瀬戸山だから、きっと江里乃のことも、受け止めてくれる。

誰が見たってお似合いのふたり。
私と並んでいるより、ずっとずっと、比べられないくらい、様になるはずだ。


ウソばかりの言葉を脳内で何度も繰り返した。