「あ、おはよ……!」

「希美もう大丈夫なのー?」


大丈夫大丈夫、と優子に合わせるように笑顔を見せた。
今日もあんまり眠っていないけれど、昨日授業を休んでたっぷり寝たからまだマシ。


「江里乃も優子もありがとね」


一呼吸置いてから、今度は江里乃をちゃんと見て、お礼を告げた。
笑ってくれたから、ホッとして「今日からテスト頑張らなくちゃね」と明るく言って教科書を取り出す。

あんまり勉強できなかったから、テストが始まるまでに少しだけでも頭に入れなくちゃ。


「そういえば、結局江里乃、瀬戸山となに話してたの?」

「え? ああ、昨日? すれ違ったら話しかけられただけだよ」


……そばから聞こえてきたふたりの会話に、微かに肩が震える。


「えーあやしいー。米田が江里乃を誘うように言っていたのも、もしかして瀬戸山が江里乃のこが気になってるから、とか?」

「まさか。大したこと話してないし。ちょっと挨拶したくらいよ」


胸がじくじくと痛みだして、目の前の教科書に書いてある文字はひとつも頭に入ってこなかった。


きっと……そうだよ。
だって瀬戸山は江里乃が、好きなんだから。

交換日記の相手が江里乃じゃないってわかったから、直接話しかけたんだ。隠すようなことはなにもないんだから。あの日記の内容は全部ウソだったんだから。

……きっと瀬戸山は、これからは、直接江里乃にアピールしていくんだろう。


「希美もあやしいと思うよねー?」

「あ、う、うん。お似合いだし……いいんじゃないかな」

「もう、ふたりとも好き勝手言って」


自分のウソに、自分が傷ついてどうする。