ブブブ、と鞄の中からバイブ音が聞こえて、涙を拭いながらスマホを探し出す。

……江里乃かな。そういえばさっき保健室に来てくれたのに……ちゃんと話できなかった。

ぼんやりとメールを確認すると、瀬戸山からのメールが5通以上。
勉強するときの連絡にしかつかってなかったのに、なに、急に。

いつから、届いていたんだろう。
そういえばずっと鞄の中に入れっぱなしだったから気付かなかった。


もしかして、バレて怒っているとか。
そんな内容かもしれない。だってこんなに連絡してくるなんて、なにか言いたいことがあるとしか、思えない。

……内容を確認するのが、怖い。

けれど無視することもできなくて、震える手でボタンを押して、古いメールから順番に開いていった。


『倒れたの、俺のせい、かな。ほんと悪かった!』

『体調大丈夫か? 今日は勉強いいからゆっくり休めよ』

『まだ休んでるのか? 明日から試験だから、無理すんなよ』

『もしかして、昨日の怒ってんのか? 謝るから、連絡よこせ』

『おーい、無視すんなよー』


「……ばか、だなあ」


思わず吹き出して、その後にまた涙を流した。
本当にバカなんだから、瀬戸山。なんで、こんなメールをするの。

こんなことされたら……余計に決心つかなくなっちゃうじゃない。もっと、メールしたいって思ってしまう。もっと話をしたくなる。

ウソでもいいから交換日記を続けたくなってしまう。
江里乃目当てでもいいから、私に笑いかけて。話をしてほしい。


あんなに嫌で、苦しくてたまらなかったのに……キスされたことも忘れたくない。