「——……っう……」


ひとりになると、涙がこらえきれなくなってぼろりとこぼれ始める。


なんで、江里乃が好きなのに。
なんで、江里乃が好きなの。

なんで、私じゃないの。

嫌いだ、あんなやつもう、嫌いだ。


——『流されるなよ』


流されたのかもしれない。だけど、瀬戸山だから、流されたんだ。
目が離せなくて、動くこともできなかっただけ。瀬戸山のことが……好きだから。


だけど、瀬戸山は“私”にキスしたわけじゃない。“その場にいた”からキスをしただけ。


それが、なによりも悲しいなんて……私って本当に、バカだ。


ポケットの中でスマホがブルブルと震えて、鼻をすすりながら中を確認する。
……瀬戸山からの、メール。


『ほんと、ごめん。本当に、ごめん』


そんなに謝らないで。
余計に虚しくなるから。