「お前ってなんか、ほっとけねー感じだよなあ」
「……そんなこと、ないよ」
「優しくしたらなんか問題?」
その質問は、ずるい。
なんて答えていいのかわからなくて……言葉に詰まる。
問題は、きっとある。たくさんある。だけど——。
唇を噛んで、泣きそうになる気持ちをぐっと堪えた。涙と、零れそうになる本音を。
「——……っな、に」
くいっと髪の毛を引っ張られて、震える声で答える。
やばい、目にもじわりと涙がたまっているかもしれない。声も、ちょっと涙声だったかも。
逃げ出したい気持ちで、瀬戸山を見た。
お団子にした髪の毛の、両サイドのこぼれた髪の毛を掴んだまま、私のことをじっと見つめてくる。
なに。なんなの。
「そういえばいつも髪の毛お団子にしてるよな」
「え、あ、ああ……楽、だから」
ああ、もう、声が震える。
目をそらしたいのに、あまりにもまっすぐ見つめてくるから、動けない。体が固まってしまったみたいだ。
「でも、この前下ろしてたよな」
……いつのことだろう。
なんだか、この状況に頭がついていかなくて、ふわふわしている。思考回路も停止中だ。
「前に、映画行った日」
ああ、そういえば……。
恥ずかしくなるくらい気合を入れて行った記憶が蘇る。
あの日、瀬戸山に言ってもらった言葉を思い出して、なんとなく、あの日から、本当は好きになっていたんだろうなとぼんやりと思った。