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いつものように、図書室で瀬戸山を待って、そのまま瀬戸山の家に向かった。
学校で会ってから、ずっと胸がざわついていて……いつもより緊張する。……なんてこと、瀬戸山は知らないんだろうな。
「なあ、これどういう意味?」
「えーとこれは、ここが接続詞で、こことつながってて……」
向い合って勉強しながら、時間を過ごす。
「あと私もいい? 化学なんだけど、これどういうこと?」
「ん?」
瀬戸山に教えてから、私も教科書をひっくり返して質問をすると、瀬戸山が身を乗り出して考える。
「そういや仲直りできたの?」
「昨日の話? ああ、うん、ありがとう」
心配してくれていたのかな。
私が返事をすると、「よかったな」と優しく微笑んでくれた。
……その笑顔に、胸がぎゅうっと締め付けられる、なんて……瀬戸山は想像もしてないだろうな。
「なんで、そんなに優しいの……」
「は?」
ぽろり、とこぼれた本音に、瀬戸山が首を傾げて、ハッとして今更だけれど口を抑えた。
なにを……言ってるの私は!
みるみるうちに顔が赤くなるのが自分でわかった。
「はは、なにそれ」
「え、と……や、なんでも……」
クスクスと笑う瀬戸山を見ていると、余計に恥ずかしくなってくる。
本当に、なにを言っているんだろう、私。
ああ、もうなかったことにしたい。時間が巻き戻ってくれたらいいのに。