「な、な……な、に」
「熱があるのかとおもった。なかったな」
「ない、よ! ちょ、恥ずかしい、ので……」
そう言うと、瀬戸山は「ああ、わり」と言って手を離した。
絶対悪いなんて思ってない……。っていうか前から思ってたけどいつも触れてきすぎだ。
こんなこと……好きでもない子にしないでほしい。
しかも……私が瀬戸山のことを好きなのを知らないで……。
「ぶは! 顔赤すぎだろ」
真っ赤に染まった私の顔を見て、けらけらと笑う瀬戸山を思わずにらんだ。
誰のせいでこんな顔になったと思ってるのか。
こんな場所で、しかもこんなふうに触れるなんて、ずるい……! 人の気も知らないで……。
「じゃーな」
ぽんっと私の背中をたたいて、背を向けながらひらひらと手を振って去っていく。
……こんなふうに、されるのは、困る。
隣に江里乃もいるのに、なんでそんなに優しくするの。
「仲いーい! なに? もしかして前に瀬戸山が“好きな子がいる”って言ったのって、希美のこと?」
「ち、違う違う違う、それは違うから!」
優子が私を肘でつついてきて、江里乃の様子を見つめながら必死で否定した。
私が気にしても、江里乃はなんとも思っていない。
優子と一緒になってひやかすだけ。
……瀬戸山は、なにを考えているんだろう。
江里乃に誤解されていいの?
もしかして……江里乃にヤキモチやいてほしかったからとか。
きっと、そうだ。
江里乃に会うために私に話しかけてきたり、教室に来たりしているのかも。そうとしか考えられない。
思ったことをすぐ口にする瀬戸山。行動も同じだ。なにも考えずに動くだけ。あの行為になんの意味もないことくらいは……わかっている。
そう思うと、すごく胸が苦しい。なのに、うれしいとも思う。
瀬戸山にとって、ちょっとくらいは特別な存在なんじゃないかって、思えてしまう。
……そんなの、勘違いだってわかっているのに。