……まさか。
無言だったけれど、私も優子も同じことを思ったに違いない。


「思ってたのと、違うんだって、私」

「なにそれ!」

「優子にも言われたけど、言い方が悪いみたいで……わがままだとか、気が強いとか、なんか、そんなふうに言われるんだよねえ」


江里乃がそんなふうに言われていたなんて。
いつも別れてもあっけらかんとしていたから、気づかなかった。


「優子みたいに、中身全部知った上で好きになってもらえるってうらやましいし……希美みたいに、柔らかい物腰で気持ちを伝えることができるのも、うらやましい」

「……そんな……」


そんなことない。
私はいつも江里乃がうらやましかった。自分がいやになるくらい、嫉妬してた。

今も——ずっとしてる。

そんな江里乃が、私を……なんて。


「早く私にも、すてきな人、現れないかなー」

「すぐ現れるよ、江里乃なら」

「そうそう。そしたら好き好きーって言いまくればいいよ! 私みたいに。嫉妬もすればいいと思う!」

「なにそれー……やだなあ」


……もしも瀬戸山に告白されたらどうする?
そう、言葉にしかかって、飲み込んだ。


「そう言えば、希美は? 結局どうなの?」

「……私はなにもないよー」


好きな人ができたよ、なんて言えるはずない。言っちゃいけない。

言ってしまうと、江里乃のことだから、瀬戸山に告白されてもつきあうことはしないだろう。

本音はつきあってほしくないのに、なんでこんなこと考えちゃうんだろう。


なんで、瀬戸山の好きな人が江里乃なの。
なんで私じゃないの。
なんで……瀬戸山なんか好きになっちゃったんだろう。