ウソばっかり。
手紙も、メールも、会話でさえ、ウソばっかりだ。

ウソにウソを重ねてウソまみれ。


こんな交換日記になんの意味があるんだろう。ウソしか無いのに、このノートには。


「やめちゃおうかな……」


いっそ嫌われるような返事を書いてしまおうか。
もう返事を書くなんてやめてしまおうか。

そう思ったのに、結局返事を書いて、いつものように、朝にノートを瀬戸山の靴箱に入れる、なんて。自分がどうしたいのかわからない。


ぼうっとしていると教室のドアがあいて、そこから江里乃が顔を出した。

瀬戸山が好きな、江里乃。
だけど、私の友達の、江里乃。

嫉妬と、妬みと、それでもなくならない、大好きな気持ちで、泣きたくなった。

ああ、ほら、やっぱり私は、なんて弱いんだろう。
江里乃が気まずそうな顔をしているから、余計に、胸が苦しくなる。


「……希美、ごめん、八つ当たりした」


そんなに素直に、口にしないで。
私の方こそ、謝らなくちゃいけないのに……。やっぱり、私は江里乃が羨ましい。

江里乃に無視されたら、私はきっと話しかけることができなかった。なのに、江里乃は素直に、口にしてくるんだ。私にできないことを、簡単にしてしまうんだ。


「ずるい」


俯いて呟くと、江里乃は「ご、ごめん」と焦った様子で私のそばに近づいてきた。


「私が、謝らなくちゃいけなかったのに……江里乃が先に謝るなんて」

「なに、それ」


頬をふくらませて江里乃を見上げると、ちょっと驚いた顔をしてから、クスっと笑った。

私、やっぱり江里乃が羨ましい。嫉妬してる。ずるいと思ってる。だけど、やっぱり……嫌いになんてなれない。

だから余計に苦しいんだ。