「これ見て、どう思う?」
「え? え? そういう答え、なんだなって……」
「そう、そう思うだろ。その間に俺がいろんな公式を思い出して、どの公式を選んで、どういうふうに計算したかはお前にわかんねーだろ。答えしかわかんねえ」
よくわからないけど……「はあ」と言って続きの言葉を待ってみる。
「お前が“どっちでもいい”とか“なんでもいい”とか“わからない”っていう答えをかけば、それしかわかんねえんだよ。そこに行き着くまでを説明しねーと、こいつは適当に答えてる、とかなにも考えてねえって思うんだよ。だから数学では公式まで書かなくちゃ答えがあってても丸にはならねえ」
そこまで話すと、瀬戸山は「わかる?」と私に問いかけた。
「なんと、なく」
「お前は頭のなかでぐるぐるひとりで考えてるから悪いんだよ。全部口にしろ。その答えが“どうでもいい”でもいいんだよ」
「……すごいね」
思わずぽろっと言葉がこぼれた。
目からうろこってこういう気分なんだろうな。
「まあ、俺は考えずに口にするけどな」
「ふは……! だめじゃん」
笑いながら言うから釣られて笑ってしまう。
……そうなの、かな。答えをちゃんと口にしないといけないと思っていた。思いながら答えが出なくて、“どっちでも”だとか“なんでも”って答えてばかりだった。もしくは曖昧に答えないまま笑ってやり過ごしたり。
「ありがとう……明日、もう一度、話してみる」
まだわからないけど、それを伝えてみよう。
それでうまくいくかはわからないけど……瀬戸山の言うようにやってみようかな。それなら、できるかもしれない。