「そうかもしれないけど……優子の気持ちも、わかるし……」

「……それって結局どっちなの?」


江里乃の問いに、ぐっと言葉が詰まる。
“どっち”なのか。江里乃の気持ちも、わかる。優子の気持ちも、わかる。


「私……は……優子の気持ちもわかるし……」

「優子のほうが正しいってこと? 私が無神経だってこと?」

「そうじゃなくて、どっちも……」


無神経、だとは思わない。
きっと優子もわかっていると思う。

どう言えばいいだろう。
どっちの気持ちもわかるし、どっちの気持ちも間違っているとは思えない。
確かに、無神経は言いすぎだったとは思うけれど……それは江里乃も同じだ。

喧嘩してしまえば、思ってないことを口にすることもある。言い方がきつくなることもある。けれど、それを気にしてしまうと仲直りできるものもできなくなってしまう。


ふたりとも友達で、ふたりとも間違っているわけじゃないから、ちょっとすれ違っただけだから、仲直りをしてほしい。


「ほんと、希美っていつもそうだよねえ」


江里乃がそう言って、辿り着いた理系の教室の扉を開ける。


「自分の意見はっきり言わないよね」


そして、そのまま、私の顔を見ないで自分の席に向かった。