こんな眼差しで、今まで江里乃のことを見ていたのかな。今、どんな気持ちで江里乃と米田くんを見ているのかな。

もしかして……本当は、資料集なんて口実で、江里乃に会いに来たのかな……。


「なに話してるのー?」

「邪魔すんなよお前ー、あこがれの生徒会松本さんと話してんだから」

「うーわ、感じわるーい。瀬戸山くんが呼んでるよ。さっさと帰れ帰れ」


話しかける優子に、米田くんが冗談交じりに言葉を返したけれど……傍から見ている私としては……気が気じゃない。本音……だったらと思うと……。

いや、冗談だったとしても、優子にはそう受け取れないんだから。


「セト、用事終わったの?」

「終わった終わった。あとで返しに来るけど。あ、それかほうか——……」

「あー! いつでも! いつでもいいから!」


放課後に、なんて言われると江里乃に勉強しているのが瀬戸山だとバレる!
瀬戸山の言葉を遮って叫ぶと、「わかった」と特に気にする様子もなく「さんきゅー」と告げて教室をあとにした。

……あ、危なかった……。

米田くんが明るい様子でひらひらと私達に手を振っている。
江里乃、になんだろうか。


「希美と瀬戸山って仲良かったんだねー。あ、前の映画からかー。いいなあ私も行けばよかった」


どういう意味だろう。
江里乃の言葉に、曖昧に笑ってみせたけれど、胸がざわつく。

それって……瀬戸山と仲良くなりたい、っていう意味? 


「っていうか、江里乃、米田と仲よかったの? さっき親しげに話してたけど」

「え? いや、初めてだけど。生徒会の松本さんですよね、とか言われただけ」

「……それだけで、あんなに楽しそうに話すの?」


私達を取り巻く空気がひんやりと冷たくなっていく。