「さっきの、瀬戸山、だよね」

「え? あー、うん、そうだっけ?」


校門を出たところで、ちらりと後ろを見た江里乃が呟く。

適当な返事を返すと、「もしかして」と江里乃がにやにやとした顔をして私を覗き込んでくる。


「だから、希美にしては珍しく私に駆け寄ってきてくれたの?」

「なに考えてるの……関係ないってー」


江里乃の顔を見ればなにを想像しているか、手に取るように分かる。
私が瀬戸山に片思いしているとか思ってるに違いない。なんでそんな思考になるの。


「俯いて恥ずかしそうにしてたから、緊張してたんじゃないのー?」

「ぼけっとしてただけ、別に瀬戸山なんて、興味ないもん」

「あんなにカッコイイのに?」


確かに顔はかっこいいけど。
だからこそ、苦手、なんて言ってわかってくれるだろうか。


「江里乃は……瀬戸山みたいな人が好きなの?」

「んー、話したことないし、わかんないなー。万が一、告白でもされたら付き合うと思うけど」


江里乃のようなかわいい女の子じゃないと許されないセリフだなあ、と思いながら、嫌味のない雰囲気にくすりと笑みが溢れる。


そういえば、江里乃はいつも告白されて付き合っているっけ。


私が知っているだけで3人か、4人いたと思う。
“告白されたから付き合った”とあっけらかんと告げて、大体数ヶ月後には“合わなかったー”とこれまたあっけらかんと報告する。


素直で、真っ直ぐで、飾らない江里乃らしい。