「誰となのー。最近私と遊んでくれないじゃないー」

「テスト終わったら、打ち上げにカラオケでも行こうよ」

「仕方ないなあ。……ホント、相手って誰なのー? 希美、秘密主義なんだからー」


はは、ととりあえず笑ってみせる。
秘密主義、なのかなー……。そんなつもりはないんだけど。


「聞いてもあんまり答えてくれないもんなあ」


……江里乃にも、そんなふうに思われているのか。

そりゃ……江里乃みたいにはっきり好みを口にできたらいいと思う。それができれば、もっと楽だろう。

——……僻みだ。
ドロドロした嫌な気持ちが自分の中に広がって、気持ち悪い。


「希美?」

「え、あ、ううん。あ、そういえば今日の現国の小テストって、範囲どこだっけ?」


慌てて笑顔を作り、話をそらそうと教科書を取り出してペラペラと捲った。
……瀬戸山の名前はまだ、言いにくい。まだ、言いたくない……。



「あ、いたいた、黒田ー!」


次の授業までの休み時間、優子の席の近くに集まっていると、突然名前を呼ばれて振り返った。

……そこにいたのは、瀬戸山と米田くん。


「な、なんで……」


なんで教室にまで来るの!? しかも名前を大声で呼んだから、クラスどころか、廊下にいたみんなも視線を私に向ける。
理系の男の子、なおかつ瀬戸山が、文系のクラスになんてほとんど来ないのに。

教室の中に入ってきて「よ」と笑顔を向ける。